BMI(Brain Machine Interface)を作る、PGVというベンチャー企業がある。 11月、PGVの開催するアイデアソンが開かれた。 今回のお題は、高性能ウェアラブル脳波センサーの利用のアイデア出しだ。 BMIに興味があったので参加したかったが、アイデアソン枠が埋まっていたので、ブログ枠の観覧者として申し込んだ。
デバイス紹介
最初にPGVが作った脳波センサーが紹介された。 冷えピタシートみたいにおでこに”貼る”だけで、前頭葉周りの脳波を、医療用途でも使えるような精度で測定できる。 そもそも、脳波は神経の電気信号から発生しているもので、非常に微弱な上、頭蓋骨という厚い層越しに計測するため、額で得られる信号はとても弱い。 それでもこのデバイスを使えば、安静状態によく発生するθ波などなどの低周波のものから、興奮状態によく発生する高周波のものまでちゃんと取れるらしい。 ワイヤレス通信が可能(普通はノイズが乗るのでたぶんすごい)。デモとして、開発責任者の方の脳波を測定し、その波形を表示し続けるタブレットが会場の真ん中に展示されていた。 本人と喋りながら波形を見ていると、確かに感情によって何かしら波形が変わっていた。
アイデアソンの様子
集まった30人がそれぞれアイデアを練って、お互いのアイデアに投票していく。20代〜30代が多そうだ。 脳波を、他の用途で解析して、何かを得るアイデアが多かった。 エンジニア視点だと、じゃあどうやって学習データ集めるんだとか、そんなことは可能なのかを考えてしまいがちなので、とても参考になる。 脳波を解析して好みの音楽を流してくれるとか、脳を計算資源にして提供可能にするとか、一目惚れを計測するとか、赤ちゃんにデバイス付けて育児サポートするとかのアイデアがあった。 僕だったら、Vtuber向けの表情コントローラーを作ってみたいなと思う。
チームに分かれて調査と資料作りが始まった。 アイデアを出した人がリーダー的ポジションで進行していくことになる。 リーダーが思考フレームワークを持っていると、資料を作成するスピードがとても早い様子が見てわかった。
発表
1時間半後に発表が始まった。1チーム4分の発表、1分の質疑だ。 それぞれのアイデアの概要と、聞いたときの感想を書いていく。
Brain Wave DJ
脳波から感情を取り、そこから音楽を選択する。更に、脳波を計測し続けて、テンポなどのパラメータをリアルタイムに調整する。 悲しいときに更に悲しくさせる、楽しい気分になりたいときに曲を変調して気持ちよくさせる、とか。
- 質問:苦しいときや怒ってるときはどうさせるべきか。
- 回答:ヒーリング系とか。フィードバックで更にローテンポにするとか。
- 感想:音楽使って感情をコントロールするのは、集中力上げるのとかにも使えて面白そう。でも、そもそも人は音楽を変調してほしいのかはちょっと疑問。
脳波マップサービスの提供
ドライバーが感じる怖い道とかのデータを得たい。ドライバーから脳波を測定してストレスなどを取得し、そのデータをAPI化して提供する。 ナビゲーションのときに渋滞情報などが使われるが、加えて恐怖情報なども提供できれば面白いのでは。ヒヤリハットマップも作れるかも。
- 質問:ドライバーみんな冷えピタ貼ることになるんですか
- 回答:ビジネスライフで使ってる人に提供していけばよいのではと
- 感想:脳波じゃなくて心拍数で良さそう。
PITA(ひとめぼれサービス)
一目惚れした瞬間にデバイスを震えさせる。草食系男子に、「お前はこの人しかいない」、ということを気づかせる。 まずは市場がありそうな婚活会社に提供する。利用者は婚活後に、「あのとき言ったことがだめだった」みたいなセルフ分析できる。
- 感想:結構良いのでは。自分の気持ちが全部相手伝わっているとすると、だいぶ疲れそうだ。もし実現したら、何が伝わって何が伝わらないのかちゃんと知りたいな。
脳 MORE BABY
子供の夜泣きで眠れないことが多々ある。それで夫婦仲が悪くなったりするので少しでも解決したい。 子供に脳波デバイスを取り付ける。子供の眠気のリズムを測定したり、起きそうなのを検知して親のスマホに通知する。
- 質問:他に何か赤ちゃん向けのウェアラブルデバイスとかってあるのか、またこのシステムとの差分は。
- 回答:音声からいろいろ検知するのを開発した。脳波は脳からしか得られないものがあるので差分はあると思う。
- 感想:んーでも結局は子供に夜泣きで起こされるわけか。これで夫婦仲が悪くならなくなるのかはちょっと疑問だ。
Brainシアター
映画を見てもらう人の脳波を測定する。そのデータを使って作品を改善したり、マーケティングを考えたりできる。 どうやって付けてもらうかが課題。芸能人等のインフルエンサーに付けてもらって、その人との比較をできるようにする。 脳波を記録し、その映画のシーンに対するログを取っておいて、そのシーンに対する感情を見直せるようにしておく。
- 質問:そもそも映画だけじゃなくて、ゲームとかでも良いのでは。
- 回答:そう思う。まあ、映画業界は博打要素が強いので、こういった需要があるのではないかと思っている。
- 感想:表情をカメラで撮る方法で良さそう。
Think connect -運転保険-
運転事故が多い。脳波を測定して、運転時のヤバさをスコア化する。そのスコアを用いた保険を作る。
- 質問:アラート音によっては更に眠くなりそう。どういうアラートが良いだろうか。
- 回答:閃光手榴弾並のパトライトで良いのでは。
- 質問:リモートワークしてる人にも使えるのでは。
- 回答:この仕組みは、利用者にメリットがあるので、普及させられると思っている。
- 感想:データがあった。プレゼンが上手い。リーダーがもともとこういうことを考えていて、今回脳波デバイスに沿わせたという感じらしい。
Brain Chain
大きな課題などの意思決定の最適解を見つけたい。脳を計算資源とし、大勢から余っている脳を提供してもらい、課題を解いてもらう。
- 感想:面白いけど実現はだいぶ難しいなー
結果
2位が「運転保険」、1位が「脳 MORE BABY」。
全体的な感想
脳波デバイスという制約に縛られない自由なアイデアが多く、聞いていて楽しかった。 個人的に一番好きなのはひとめぼれ検知デバイスだった。たぶん実現は可能だと思うし、需要もあると思う。ぜひサービス化してほしい。 逆に、脳波デバイスじゃないと実現できないようなアイデアは少なかった。 安価な代替デバイスがあると旨味が減るだろうから、ちゃんと脳波を活かせるアイデアを思いつきたい。
全然関係ないけど、会場のLODGEにたどり着くのがなかなか難しかった。最寄り駅から20分くらいさまよっていた。